古典文学の魅力とエピソード

古典文学の魅力とエピソード

今昔物語集

昨年、家族でポルトガルに行った後、母が実はガンだったと聞き、驚いて日本に一時帰国しました。ポルトガルに一緒に行っていたのに、その最中に言わなかったのは、ヴァケーションなのに心配をかけたくなかったのだと思います。日本人らしい母の気遣いでしたが、私は半分米国人化しているので、さっさと言っていれば良いとも思いました。

日本には一週間しかいなかったので、本屋にも二度ぐらいしか行けませんでしたが、そこで手に取ったのはこの小学館から出ていた「日本の古典を読む」シリーズの今昔物語集でした。

私の母は国文科出身だったので、家には昔から岩波書店の「日本古典文学大系」があり、私は中高の頃によく読んでいました。私は女官のぐちやゴシップみたいな蜻蛉日記や枕草子にはあまり興味がありませんでした。源氏物語も優雅であまり関心がありませんでした。しかし、受験に出るからという理由で全て読んでいました。大学入試の古典は、たいてい蜻蛉日記などから一部抜き出して、「この部分はどうしてか?」といった質問が多かったので、一度全て読んであらすじを理解しておけば役に立つだろうと思ったのです。実際、早稲田の試験で、更科日記か蜻蛉日記の読んだ部分が出題され、私は知っていたので答えることができました。

ただ、私はこのような王朝文学は好きではありませんでした。それよりも私が好きだったのは、今昔物語、日本霊異記、宇治拾遺物語です。これらの文学はもう800年から1000年前の内容なのですが、描かれている人間の生き様がリアルで、私は素晴らしいと思いました。

ちなみに、私は無知で、小学館といえば、コロコロコミックスぐらいしか知りませんでしたが、岩波書店以外にも小学館も昔から「日本古典文学全集」というシリーズを出していたようです。この「日本の古典を読む」シリーズは、日本古典文学全集のダイジェスト版だそうです。現代人は忙しいので、今昔物語などの全4巻本では読まないでしょうから、1冊にまとめるのは良いと思います。関心のある人は4冊組を読めば良いわけですし。ただ、源氏物語などはどうやって短くするのでしょうか。説話集なら、面白いエピソードを選ぶだけですが。

エピソード

せっかくなので、ここで印象に残ったエピソードを紹介します。

尼たちが山に入り、茸を食べて舞うこと

現代訳タイトル:尼さんと木こりが違法薬物でトリップ

木こりが、京都の北山で道に迷っていたら、尼たちが踊りながらやってきて、これは化け物かと思いぶっ殺されるかと「 いみじくおそろし」と思ったら、尼さんたちは、道に迷って空腹のあまり、見つけた茸を食べたら、踊りながら笑い出したそうです。木こりも茸を食べたら「心ならずも被舞けり」と踊らずにいられませんでした!しかも、「なむ笑ひける」とすごいトリップをしてしまったそうです!

これは、所謂マジックマッシュルームを食べてしまったのですね。日本にも自生していたのですね。あと、今から800年前は、京都の北山がすごい森だったのか。

道成寺の僧、法華経を写して蛇を救うこと

現代訳タイトル:後家さんに誘惑されるイケメンの巻

熊野詣でに行く老人と若くてハンサムな僧が、家に泊めてもらったのですが、その寡婦の女主人から誘惑されて「深く愛欲の心を発して」!昼間見た時から、あなたを夫にしようと決めていた!と言われて、「君を宿して、本意を遂げむ」と思ったのだそうです。

ちなみに、「本意」という言葉は今昔物語でよく出てくるのですが、要するにセックスするということです。

僧は、修行中ですので、駄目ですと断りますが、寡婦に一晩中誘惑されてしまいます。普通なら一晩中も誘惑されたら、当然誘惑に屈しそうなものでしょう。

ちなみに、僧は嘘をついて、女から逃げ出すのですが、女は怒り狂って大蛇になり僧を殺してしまい、さらに呪いで僧を男の大蛇に変えて、結局夫にしてしまいます。

王朝物語よりも全然面白いでしょう。


Written By

Masahiko Aida